【ASAHI EITOホールディングス株式会社のお知らせ】新しい挑戦「希ガス」、杭氧特種气体有限公司との協同事業開始 および戦略的協力枠組協定締結について

2025.09.16

 当社グループは、2025年7月11日付適時開示「祖業の黒字化への取り組み、アジア戦略の見直し等の事業構造改革について」で公表しました通り、以下の重点項目において経営改革を行っております。

(1)祖業であるアサヒ衛陶株式会社の事業改革
(2)グループとしてのアジア展開見直し
(3)新しい挑戦への取り組み

 上記(3)について、当社は、2025年9月12日、杭氧特種气体有限公司(以下、杭氧特气)との間で戦略的協力枠組協定(以下、本協定)を締結しました。(有効期間:契約日より5年間)これにより、当社グループの「希ガス」事業は、杭氧特气、および親会社である杭氧集团股份有限公司(以下、杭氧グループ)の日本進出にあたっての「ヘリウムおよび希ガス製品群」の独占的パートナーとして、ビジネスを展開する事が可能となり、「希ガス」事業における大きな柱の一つとなります。

1. 杭氧特气について
 杭氧特气は杭氧グループにおいて、産業用特殊ガス(以下、「希ガス」)の生産・販売を行っており、その用途は、半導体製造分野、各種ディスプレイ分野、航空宇宙分野、精密工学分野の多岐に渡り、杭氧特气は中国国内において「希ガス」を国産で安定供給できる数少ない中国企業です。
 また、親会社の杭氧グループは、中国の杭州市にある地方政府の部門であって杭州市に属する国有資産の管理・監督を行う組織である杭州市国有資本投資運営有限公司を実質的支配者とする杭州市内の国有企業で国家プロジェクトを多数請け負う中国有数の重工系企業です。杭氧特气は杭氧グループにおいて、「次世代収益源」を担う連結子会社として重点育成中の企業です。

<杭氧特气概要>

正式名称衢州杭氧特種气体有限公司
カタカナ表記コウヨウトッキ
英語名Hangyang Special Gases Co., Ltd.
設立2017年3月15日(杭氧グループの完全子会社として)
所在地浙江省衢州市高新技術産業開発区
事業内容ネオン(Ne)、ヘリウム(He)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)などの希ガス(特種ガス)の精製・販売、半導体業界向けの電子特気(高純度・特殊用途ガス)供給
資本構成2023年に混合所有制改革(増資)を実施
備考杭氧集团が57.09%保有し、連結子会社として存続

 <親会社:杭氧グループ概要>

正式名称杭氧集团股份有限公司
カタカナ表記コウヨウグループ
英語名Hangyang Group Co., Ltd.
証券コード002430.SZ(深セン証券取引所)
設立1950年(上場は2010年)
本社所在地中国浙江省杭州市拱墅区中山北路592号
実質的支配者杭州市国有資本投資運営有限公司(国資系)
主力事業空気分離装置(ASU)や低温石化設備の製造、産業用ガス(酸素、窒素、アルゴンなど)の製造・供給、特殊ガス(ネオン・クリプトン・キセノン等)の開発・販売、EPC(設計・調達・建設)一体型のインフラ事業

 杭氧グループの財務状況は以下の通りです。

出典)ブルームバーグ等、売上高及び純利益は前年決算期(2023年12月期)、時価総額は2025年8月初旬時

2. 協同事業および戦略的協力枠組協定について
 本協定は、杭氧特气が当社をパートナーとして、日本において「希ガス」ビジネスに本格的に参入する第1段階として位置づけられます。第1段階として、「液化ヘリウム」を取り扱い、杭氧特气と当社は日本市場への進出を図ります。

(1)協同事業の目的と具体的な内容
① 日本にて工場・倉庫を建設し、中国から輸入した「液化ヘリウム」を日本のエンドユーザーに分装・販売する
② 日本の半導体関連企業、医療機器関連企業、航空宇宙関連企業への販路を拡大する
③ 日本を拠点として、東アジア、オセアニア等への進出を図る
④ 初期段階で年間70万㎥のヘリウム供給体制を整え、最終的には年間81万㎥の販売を計画している
⑤ 「液化ヘリウム」を足掛かりとして、将来的には、クリプトン、ネオン、キセノン等、他の「希ガス」の製造販売拠点を日本に築き上げる

 本協定に基づいて当社グループは、日本での工場建設に際して工場用地の準備、工場設備の共同整備・管理、専門人材の採用を行います。また、販路拡大においても協同して活動を行う役割を担います。本協定は有効期間が当初5年間とされており、その間に上記の役割を果たし、杭氧特气との関係をより強固なものとしていきます。
 日本においては、液化ヘリウムの販売を契機として「希ガス」ビジネスにおける国際市場でのブランディングを更に確立していく計画です。

 当社グループにとってのメリットは、杭氧グループの資金力、技術力、国際的なブランド力を活用して、新しい挑戦である「希ガス」事業を拡大できることが挙げられます。
 杭氧グループにとってのメリットは、日本に新たな拠点を構築する事で、日本企業とのビジネスを拡大出来る事、東アジア・オセアニアへのハブとして「希ガス」ビジネスを推進出来る事、また、地政学的リスク等に起因する中国本国における供給ショックへの備えを一段と高める事が出来ることが挙げられます。

(2)市場規模の想定について
 当社と杭氧グループは本プロジェクトを足掛かりとして、日本の「希ガス」ビジネスに本格参入を行い、将来的には日本の「希ガス」市場の最大10%のシェアを獲得する計画を保有しております。
 本協定において、当社は杭氧特气より「ヘリウムおよび希ガス製品群」について、日本市場における「独占的パートナー」として選定されており、アジアを含めた将来的な市場規模3,000億円~5,000億円とされる(注1)日本の「希ガス」市場を杭氧特气と共に開拓して参ります。

(注1)出典:Global Market Insights(GMI)/ 2024(Global Rare Gas Market)

3. 第1段階としてヘリウムに取り組む背景
(1) ヘリウムの世界的な供給環境
 当社と杭氧グループは、ヘリウムの国際的な需要について、半導体製造や量子計算、医療用MRI装置等において高純度ヘリウムの需要は伸張し、2035年までに世界需要は現在のほぼ倍、まで増加すると想定しています。(注1)
 一方、ヘリウムの主要供給国においては、米国やカタールがその大部分を占めてきましたが、米国の輸出縮小によるシェア低下やカタールの生産能力向上の限界等が原因となり、中長期的にヘリウムには需給ギャップが生じ、需給ひっ迫の環境が継続すると想定しています。

(2) 当社と杭氧グループの競争力について
 杭氧特气は、「液化ヘリウム」の貯蔵に関して、多くの技術的なブレイクスルーを果たしています。これらの技術革新により、輸出過程における損失量が大幅に減少し、納品時に十分な供給量を確保することが可能となっています。また、中国と日本の地理的距離は、日本企業が現在ヘリウムを輸入しているアメリカ・カタールよりも圧倒的に近く、物流コストと損耗リスクを抑制することが可能です。また、杭氧特气の「液化ヘリウム」は複数の国際規格に既に適合しております。(注2)上記の条件を組み合わせた結果、「液化ヘリウム」について、現行の日本市場価格に対して、関税込みの引き渡し価格においてであっても、同業他社比較で価格競争力を有する事が可能である、と想定しています。

(注1):IDTechEx(Engineer Live記事Data Centre Magazine記事)より引用
(注2):ASME、DOT、TPED等

(3) 政策支援について
 ヘリウムに関しては、日本、中国共に長期的に輸入に依存している状態であり、エネルギー安全保障上の課題に直面しております。その為、日本では2019年に、一般社団法人日本物理学会による「ヘリウムリサイクル社会を目指して」との声明が出されました。中国においても、中国政府がヘリウムの確保について政治任務に盛り込み、ヘリウム産業チェーンの自主性と国際化を推進し、企業が海外でヘリウム分装工場を建設するための戦略的支援と資源が提供されています。このように、ヘリウムの供給に関して、選択肢が増えることは日本と中国双方の国益に沿うと考えています。

4. まとめ
 第1段階でヘリウムへの取り組みを行う事業は、世界的なヘリウム需給ひっ迫という背景を追い風に、日本国内で安定供給拠点を構築する為のプロジェクトであり、当社と杭氧グループが日本において「希ガス」事業を協同で行う出発点となります。
 市場の成長性、コスト優位、政策支援と言った事業成功の為の各要素が揃い、杭氧グループという中国有数の重工企業の組織力等を背景とした実現可能性の高いプロジェクトです。

5. 今後の見通しについて
 本件が2025年11月期連結業績に与える影響は軽微です。
 今後、本協定に基づき、杭氧特气との具体的な取引スキームや工場用地の契約等、様々な事柄が決定していくこととなります。新たにお知らせすべき事項が発生次第、速やかに開示を行って参ります。


(注)ニュースリリースに掲載されている情報は、発表日現在の情報です。
内容が若干変更になる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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