【ASAHI EITOホールディングス株式会社のお知らせ】2025年5月10日 「希ガス」記者会見インタビュー

2025.05.12

ASAHI EITO HD株式会社
代表取締役 星野和也

Global Semiconductor Special Gas Limited
董事 虞華威

ECEM Singapore LTD
董事 雷海平

星野:今日は、当社の筆頭株主であるGlobal Semiconductor Special Gas Limitedの蘆代表、今回資本業務提携契約を締結したECEM Singapore LTDの雷代表、が日本に揃って来日された、という事で、今回の資本業務提携の意義や、今後のASAHI EITO HDの先行きについて私自身の思いも含めて、色々とお話をさせて頂きたいと思います。

 まずは雷社長、今回の資本業務提携について、改めてお聞かせください。ご自身の経歴と今回ECEMシンガポールでの増資に至るまでの過程について、お話を伺いたいと思います。

雷:まずは今回、ASAHI EITO HDと資本提携契約が締結できた事を喜ばしく思っています。私は産業用ガスの世界で40年ほどのキャリアを積んでおり、産業用ガスで世界最大手のLinde Incにてマネージャーを務めた後、中国でECEM社を設立し、独立しました。その際にパートナーとなってくれたのが、今日同席している蘆氏です。産業用ガスといっても様々な種類がありますが、私が専門としているのは、半導体製造工程にて使用されるような特殊高純度産業用ガスです。中国で設立したECEMでは、この特殊高純度産業用ガスの製造に特化し、半導体のサプライチェーンへの供給に成功しました。
なかでも「小数点以下7桁」の特殊高純度産業用ガスの製造プロセスはアジアでトップレベルにあると自負しております。
 中国ECEMでの顧客は、世界的半導体ファウンドリーの一つであるSMIC(注1)、Intel大連、華虹半導体(注2)等の大手企業へと製品を納品してきました。
 2026年度の売上高見込みは日本円で約30億円、EBITDA18億円(注3)まで成長しました。

(注1)Semiconductor Manufacturing International Corporation
(注2)Hua Hong Semiconductor (1347.HK)
(注3)1人民元=19.2円で計算

星野:利益率がとても高いですね。我々が今回の資本業務提携を締結する過程で産業用ガスの利益率を調査しましたが、半導体製造向けの特殊ガスは同業他社においても、とても高い利益率でした。何か特殊な要因はあるのでしょうか。

雷:利益率が高い原因はいくつかあります。
  一つは、高い技術力が必要なことです。産業用ガスは例えば、ポテトチップスの袋に注入するようなシンプルな窒素も産業用ガス、と呼びますが、我々が製造している特殊高純度産業用ガスを製造するには、深い経験と技術が要求されます。知財に関することなので、あまり詳しくは語れませんが、技術と経験、これが一番の要素です。
 2つ目は、設備投資が必要なビジネスである、という事です。今回、ECEMシンガポール全体においては1,000万SGDを調達し、マレーシアの既存工場を買収すると共に隣接地に新たな設備を構築する計画ですが、技術と経験がない企業がいきなりこれだけの資金を調達することは難しいでしょう。そういう意味では特殊高純度産業用ガス業界は、参入障壁が非常に高い業界であると言えます。
 3つ目は、原料が気体である事です。液体を組み合わせたり、機械を製造したりといった他の半導体製造関連装置と比較すると原料の調達が安価であることは理由として挙げられます。

星野:よくわかりました。今回の資本業務提携を機に、シンガポールへ進出する形になりますが、シンガポールを選択された理由を改めて教えてください。

雷:皆さんよくご承知のことと思いますが、現在の半導体製造産業は多くの国で国家プロジェクトとなっており、その分貿易摩擦や政治的な要素によって影響を受ける可能性があります。シンガポールは一般論ですが政治的に中立な立ち位置にあると考えられており、現在多くの半導体サプライチェーンや半導体ファウンドリーがシンガポールに進出しています。特殊高純度産業用ガスのビジネスにおいて、輸送費が非常に大きな費用を占めるビジネスですので、今回シンガポールを選択した理由は上記の情勢に沿ったものです。また、シンガポールと距離が近く、製造拠点となり得る工場をマレーシアで発見し、買収を合意出来たことも大きな理由です。言葉にすると簡単ですが、マレーシア工場の買収やシンガポール法人設立までの道のりは、何時間でも話せるほど多くの障害を乗り越えたものでした。

星野:そうですね。非常に論理的な議論に聞こえますが、構想するのと実行するのではまた難易度が全然違いますね。後ほど、蘆さんにも話してもらいますが、今回の増資によって、ASAHI EITO HDともう一社、上場企業が株主となる予定であり、連結会計の対象になると共に、決算を公にしていく必要があります。そういった意味でのプレッシャーを感じる事はありますか?

雷:私自身、先ほど申し上げた通り、独立前のキャリアは上場企業でのマネージャーで、会計やコンプライアンスといった基本的な事項はECEMでの経営においても徹底してきました。ECEMシンガポールでの特殊高純度産業用ガスを製造に関しては、ECEM立上げの際の再現を行えばいいと考えています。また、マクロ状況のところで申し上げましたが、顧客となる半導体ファウンドリーやサプライチェーン各社が既にシンガポールに進出しており、販路に関しても不安はありません。例えば、既にECEMシンガポールを通して商品を供給しているUMC(注4)もECEMでのコネクションをそのまま活かして販売に成功しました。ECEMで実現出来た実績をECEMシンガポールにおいて実現することは可能であると私は考えています。
 まだ詳しくはお話し出来ませんが、皆さんが驚くような取引先も今後増えてくると考えています。
(注4)United Microelectronics Corporation

星野:今後は、当社も知財を共有して半導体ファウンドリーや大手企業とビジネスを行っていくことになるので、今まで以上に研究をしていかないといけないですね。蘆さんにもお話を伺いたいのですが、現在(注5)ASAHI EITO HDの筆頭株主でいらっしゃると同時に、今回のECEMシンガポールの増資においても約51%の引き受けをされて、筆頭株主になられるとの事ですが、その狙いはどこにあるのか、お話を伺えますでしょうか。
(注5)2025年4月30日時点にて

蘆:私は国際会計士として、これまで世界中の企業のアドバイザーや顧問を務めてきました。その上で日本経済全体がデフレを脱却し、企業統治を変革し、グローバルに活動しようとしている新たな潮流を感じ取り、日本企業への投資を決定しました。その中で、ASAHI EITO HDへの投資を決定した理由は大きく2つほどあります。
 1つは、変化への対応の速さです。日本の大企業が市場と向き合い意思決定のスピードを進化させている事を感じてはいますが、ASAHI EITO HDのような比較的小規模な企業は意思決定のスピードが速く、星野社長をはじめとした経営陣が我々と共に、変化に向き合ってくれると感じた事が理由です。
 2つ目は、経営陣の若さです。私の基本的な投資のスタンスとして、今後数年間に渡る長期投資を行ってASAHI EITO HDの企業価値向上に貢献したいと考えていますが、その為には経営陣にも、時間をかけてしっかりと経営に取り組んでもらう必要があります。まだ40代である星野社長を含めて中長期的な取り組みを行ってもらうことが出来ると考えたからです。

星野:ありがとうございます。今後、半導体業界にてプレーヤーの一員として行動していく準備を経営陣、社員含め一丸となって取り組んで参ります。その他に当社に求めること、蘆さんが構想されている事はありますか?

蘆:今回のECEMシンガポールの株主構成は増資完了後

  Global Semiconductor Special Gas Limited 約51%
  台湾の上場企業(予定)25%
  ASAHI EITO HD 20%
  ECEM役員・従業員 約4%

となる予定です。
 まずはシンガポールでの実績作りを雷さんのサポートとして全力で支援しますが、同時にECEM JAPAN(仮称)を立ち上げていく計画を持っています。
 先ほども申し上げた通り、日本企業が変革を行ってデフレを脱していく中で、シンガポールの次の拠点として日本が最有力の候補となります。
 ASAHI EITO HDには、ECEMシンガポールの対等なパートナーとして、世界の半導体大手企業とのビジネスの実績を積んでもらい、将来ECEM JAPAN(仮称)が立ち上がった際には、主体的に日本で活動をしてもらいたいと考えています。

星野:大変光栄なお話です。

雷:半導体大手企業とのビジネスの現場は正に世界のビジネスの最先端のビジネスで、戦略的な思考、組織として迅速な行動が求められます。ASAHI EITO HDには一刻も早く、その感覚を身に着けてもらい、活躍してもらわないと困ります。

星野:光栄なだけではなく、責任も重大ですね。

蘆:ECEM JAPAN(仮称)の立ち上げには、そんなに時間をかけるつもりはありません。ECEMシンガポールは2027年頃には現在のECEMと同規模の実績を挙げると想定しており、同時期には具体的な立上げを行う構想を持っていますので、御社もこのスピード感に付いてきて欲しいと考えています。

星野:当社としては、子会社として株式会社アサヒピュアケミを設立し、紀氏を社長として招聘して専門的な知識を持った人材を確保して行動を行う準備を行ったところです。一方、リクルートを行って戦力を増強するのはもちろんですが、現在勤務している社員にも「リスキリング制度」を導入し、やる気のある社員の後押しを行っていく方針です。元々ベトナムにて子会社を保有して生産委託を行っておりますので、海外でのビジネスに関して積極的な社員は数多く存在します。本業における改革にも目途が立ちつつあり、今回の資本業務提携をきっかけに、正に当社自身が大きく変化できるよう、精一杯努力する所存です。

蘆、雷:我々もASAHI EITO HDの企業価値向上の為には協力を惜しみませんので、今後ともよろしくお願いいたします。

木